秋季限定栗きんとん事件<下>

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

いくら狂言回しの代理主人公だろうと、あるいは必要に迫られて作られただけの犯人だろうと、フォローが何も無いのは悲しい限り。それだけなら悲しいで済むんだけど、代理主人公が使い捨てられると読んでても分かってしまう所と、犯人にさしたる動機の披露場面も与えられないだろうということが、上巻の段階で読み進めて行くうち分かってしまうところにどうしても苛立ちを感じてしまう作品だった。まあ犯人はともかく、代理主人公といえど上下巻合わせて半分弱はその人物の一人称で占められているわけだから、使い捨てられるとここまで読んできた道のりが無駄にしか思えなくて読後感が悪すぎる。まったりした日常ミステリの名手として知られてる作者さんだけど、意外に性質悪いよなあと思ってしまう俺は、ミステリ読むのに向いてないのかも知れない。犯人の動機が脆弱だとそれだけで読後感悪い、って思っちゃうくらいだから。面白いか面白くないかで言えば間違いなく面白いと思うんだが、物語の出来としての面白さとは別として、このシリーズは面白くない。この手の娯楽小説は、最後の1ページが最後ではなく、読後感を含めた部分までが最後なんだ、と思う。