本屋で

とある本屋に来ていた。かなり規模の大きい店舗であり普段は人で賑わっているのだが、流石に時間が時間ということもあり、閑散としていた。
特に目的もなく店内をぶらついていると、突然けたたましい電子音が店内に響いた。
それは、とある客の携帯が着信を告げた合図であった。
閑散としていたことが災いしたか、その着信音はえらく耳に付いた。しかし原因は、店内が静まり返っていたことばかりでもない。俺はその名も知らぬ他人の着信メロディに明らかに聞き覚えがあった。
(何だったか……。確実にどこかで聞いた事があるんだけど、うーん)
と、内心で腕組みをしながら、その聞き覚えのあるメロディを印象から逃さぬよう、何度も根気よくリピートさせていると、ようやくといった感じで思い出した。
──ガンダムXの主題歌(第一期)だ……!!
ようやく思い出せたこともさることながら、ガンダムXの主題歌というマイナーなチョイスが、俺の気持ちをいたく高ぶらせた。数あるガンダムの中から、敢えてガンダムXを選ぶ人間など、相当に変わり者だ。この俺を含めて。