日本沈没(旧)

というわけで、1973年に公開された方の日本沈没も見てしまいました。二日で二度日本が沈没したのは俺ぐらいのものではなかろうかと思います。

さて旧版の日本沈没ですが、こちらは恐らくかなり忠実に原作を再現してあるであろうだけあり、昨今の見栄えのする物語構成は皆無ですし、都合の良いハッピーエンドも見当たりません。リメイク版と異なり日本列島を完全崩壊から救う奇策もありませんでしたし、流行の純愛要素も……無いと言うわけではないしむしろ有るのですが、あくまでも大きな流れのなかの一部という地味な描き方をされています。
そしてもっとも大きな差としては、リメイク版は後半が純愛を見せることに比重が置かいたのに対して、旧版は原作者が言いたかった本当のテーマを見せることに集約し、収束していくことでしょうか。

──いわく、日本人は、日本人で在り続けることが出来るのか?
リメイク版では片鱗がちょこんと見えていただけの本来のテーマが明確であり、そして恐らくそれだけがこの、本来の日本沈没なのでしょう。

70年代も前半なわけですから、恐らくすごい勢いで国際化されていった時期で(マクロなことがらは当然として、身近な文化レベルでのことでも)、国際化といえば聞こえはいいけど、穿った見方をすれば欧米諸国に尻尾を振っているわけでもありまして。
それはある意味では、『日本という国が、日本人という種族が、薄れていく』ということでもあると思います。それに対して警鐘を鳴らしたかったのがこの作品なのではないだろうか、と考えました。
(しかし流石に自分が生まれる前の映画となると、こうやって好き勝手テーマがどうのこうのと書き散らすことへの自信が持てなくて参る。見当違いだったら失礼な気もしますしね)

しかしまあ、純愛メインのリメイク版にテーマありきの旧版。両方見ておいて何だけど、そのどちらでもないデイアフタートゥモローの方が、どちらよりも面白かったよなあ、と思ってしまうのは自分でもなんだか悔しいです。比べるものでもないかも知れないけどさ。

けどしかし、日本国最後の首相に丹波哲郎、そして主人公に藤岡弘。二人とも情熱とエネルギーを備えた人物として演じられており、役者の力もあいまってとても格好よかったです。こんな風な男になりたいものです。
特に丹波哲郎が良かった。使命感と情熱と日本と日本国民を思いやる気持ち。素晴らしい。こんな人にリアルでも総理大臣を務めて欲しいものです。