DS版FF4 カイン

ハードを変えて何度もリリースされてるFF4ですが、DS版は完全にリメイクが施されてる一品です。4というとシリーズ中でも殊更ドラマチックなシナリオが印象深い作品なのですが、当時のドット絵では流石に再現しきれないレベルのシナリオだったのだなと、このDS版をプレーしてみて実感したりしています。

主人公であるセシルは、その正義感とは正反対の暗黒騎士というクラスに就いており、自分の存在について悩みます。シナリオ冒頭から無抵抗なミシディアの魔術師たちからクリスタルを奪取した後、というハードな展開ですからね。(いっそのことリメイクに際して、このミシディアでの一連の戦闘から本編に組み込んでも良かったんじゃないかなと思う。惜しい)

そんなセシルの親友である竜騎士のカインは、現実主義で時折冷酷さをも覗かせる一面はあるのですが、おそらくはセシルの親友でありながらその親友の恋人であるローザを密かに想っている、というのが彼の性格の形成上大きなウェイトを占めていたと思われます。しかしセシルと必要以上に距離を置くわけではなく、あくまで親友として対等に接してこれたのはひとえに、彼の純朴さやひたむきさ、義理堅さにあったのではないかと思います。
カインの人間としての強さは世界全体のために動かされるものではなく、どちらかというと身近な人を守るために向けられるものです。
例えば序盤でリディアと出会った際、カインは問答無用でリディアを手にかけようとします。
結局セシルに止められ未遂に終わり、カインは「お前なら止めると思っていたぜ」といって槍を収めますが、セシルが止めなかったら本当にリディアを槍で突き殺していたのではないかと思います。(まあ、セシルが止めないはずはないのですが)暴走した召喚師の恐ろしさをよく知っていたのでしょう。ならばと、無二の親友であるセシルを守るためなら、縁も所縁もない召喚師一人を手にかけるぐらい、カインにとっては至極当たり前のことだったのでしょう。

おそらく今よりもさらに若い頃のセシルは、未熟であるにも関わらず正義感や優しさに振り回されて、かなり危なっかしいところがあったのではないでしょうか。現実との折り合いがうまく付けられないというか、それは赤き翼の団長に就任しても変わらないのですが。
対してカインは、自分に出来ることと出来ないことの分別がつく性格です。無茶をやるセシルを影から支え、ときに彼のために汚れ役だって甘んじて受けていたのかも知れない。自分にはない正義感や大きな理想を持つセシルを守ってやるのが自分の役どころだ、という一種の理解もあったでしょう。
これがセシルとカインだけならば、例え何があってもいいコンビでいられたとは思うのですが、しかしローザという存在がありました。分別がつく性格だからこそ、カインはローザへの想いはひた隠しにしていた。
人間関係は損得ではないけれど、セシルばかりが得をしている、という風にどうしてもカインには見えてしまい、無二の親友と認めてはいるものの、どこかで憎らしくも思っていたのかも知れません。
しかしそれでもバランスが保たれていた関係は、物語が進むにつれ、大きな転換を迎えることになるわけですが……。

とまあ滅多矢鱈にカインを語ってるわけですが、それでもやっぱりカインが好き。いかにも物語的な悩みを抱えているキャラクターは古今東西沢山いますが、そういう薄い造詣のキャラクタにあまり魅力は感じない。リアルな葛藤を抱えているカインが好きなのです。