氷の華

氷の華 (幻冬舎文庫)

氷の華 (幻冬舎文庫)

米倉涼子主演でドラマ化するそうですが。というかもう放送今週ですが……これは面白かった。ヒロインである若妻の恭子と(若妻なんて単語、普通はそうそう使わんで)、警視庁ベテラン刑事の戸田の二人の視点から事件が語られていく。
コロンボみたいというと語弊があるけど、犯人の犯行が早々に描かれ、そこから新しい事実が展開していくという流れ。犯人の前には(犯人名は別にネタバレにはならないんだけど一応)隠されていた真実が、そして戸田は事件を地道に、地味に追って、少しずつ事件を解きほぐしていく。
よく言われているけど、現代版の松本清張というおもむき。刑事がひたすら足で事件を調べていく先には、犯人たる幸薄い女性の姿が見え隠れする、という構図。しかしこの氷の華には独特の緊張感があり、それはひとえに、恭子視点と戸田刑事視点、という二つの視点の絶妙なさじ加減ゆえの効果だと思う。恭子視点からは、追われる者の焦燥と見え隠れする真実への期待や不安、そして戸田刑事視点からは、事件のアウトラインをなぞっていくと供に、恭子という一人のミステリアスな女性の危険な魅力を垣間見れる。
物語は二転三転し、最後まで、そう本当に最後の1ページまで目が離せない。こんなに活字に熱中したのは久し振り。

実は俺は、最初の十数ページで、事件の仕掛け人とトリック、ラストシーンとタイトルの意味まで予想はついちゃったのだけど、それでもなお面白く読めてしまった。ひとえによく練られた構成と計算されたテンポの効果だと思う。展開を読みやすいという事は、逆説的に、「先読みしたくなる魅力」があるという事に他ならないわけです。

ドラマの方は結構設定は変えられているみたいだけど、あの恭子の魅力がどこまで再現されるのか気になるところ。土曜というともろに試験前日なんだけど、見るぜー。