映画の感想

書くことがないので映画の感想。

バンテージ・ポイント
いかにも欧米の人が好みそうな群像劇仕立ての一本。大統領暗殺事件が発生し犯人をとっ捕まえるまでの数十分をさまざまな人種の視点から少しずつ紐解いていく。見終わってよく構成は練られているなと思ったけど、「だから何?」という感想しか持ちえない残念な仕上がり。視点が切り替わるたびに事件の真相に迫っていくわけだが、たいして隠すほどでもない真相でしかないところが、作品全体の軽さの呼び水になってるわけだ。構成だけじゃなく、きちんとシナリオも練らないと。

クライマーズ・ハイ
こちらは日本の映画。いやドラマかな? かつて実際に発生したジャンボ墜落事件に記者として関わることになった一人の男の物語。これは凄く面白かった。半端なかった。
かつて自分の乱暴な指示で部下を死なせてしまった主人公。重すぎる過去を背負うことになった男は部下を持たずに単なる一記者として仕事をしていたが、ジャンボ墜落事件の全権を任されたことで正念場に立たされる。
若い後輩記者の熱意と衝突し、上司との確執が表面化し、締め切りの問題で販売部と全面戦争になる。上がってきた記事が社長の意向に沿わずに社長に直談判し、事件の遺族には真実を伝えて欲しいと懇願される。家では息子との意思疎通に悩む。まさにジャーナリズムの戦争。派手なドンパチもカーチェイスも無いが、まさに男たちの生々しい戦争の日々である。
実在の事件と苛烈なジャーナリズム描写を通して、『命の重みの真実』を描くとてつもなく重い作品です。事件から20年後の主人公が当時の親友の子供と断崖のクライミングをしながら過去を振り返る形で物語を進めていく手法もお見事。
登場人物それぞれに個性があり、またそれぞれに信念がある。ジャンボジェット墜落という大きな事件の奔流に地方紙の記者として全力で立ち向かった果てに主人公(視聴者)は、本当の命の重みとは何なのかという事を静かに突きつけられる。

物語とテーマ性と緩急のついた構成と血の通った登場人物により、映画って見る者に印象を残すのだと思います。このクライマーズ・ハイという作品はまさにそれ。素晴らしい。


というわけで今回の映画の感想は終わり。